Jun 9, 2015

明日からマネしたくなる、賃貸住宅で「電気代ゼロ円」のたのしく心地よいくらし 2

オフグリッドな暮らしを支えるアイテム

――それでは、その環境の礎となる「チカSUN発電所」こと、ベランダのソーラー発電装置のあれこれをご紹介しましょう。

基本的には、ベランダの手すりに設置したソーラーパネル(ワットアワーであらわす)と、バッテリー(電気を蓄える装置/アンペアアワーであらわす)とコントローラ(電気の流れを整える・逆流防止の装置)とインバーター(直流から交流に電気の流れ方を変えて使うための交換機)のセットです。

少しずつ買い足し、4号機まで合計で約250ワットぶんをそろえ、費用は約20万円。(現在は「3号機」をレンタル中なので、約211ワットを発電中)。

ひところは「長もちしない」と言われたバッテリー類も、最近はメンテナンスしだいで10年以上耐用可能といわれるものも増えました。震災以降、ソーラー発電の技術は飛躍的に進化中です。

shizen_8
左手:43ワットの中古パネル「ふたごちゃん」2枚は、バッテリーやインバーターなど込みで3万5千円。
右手:120ワットの新品パネル「清水クン」1枚(工事技師さんのお名前)は、上記の機材や工事費込みで約14万円。ベランダ右端:5ワットの「チョットちゃん」1枚は、パネルとバッテリー合わせて約5,500円。
shizen_9

ベランダに置かれた衣装ケースの中には、100アンペアのバッテリー1つと7アンペアのバッテリー2つ。

――直流…交流…パネルの角度…最初はわからないことだらけで、悪戦苦闘したという藤井さんですが、面白がって夢中で学ぶうちに、今ではすっかり匠のソーラー女子に。

――ソーラー発電だけで一日約400~500ワット使う電気のすべてをまかなうわけではなく、各種の「ソーラー家電」や「節電グッズ」もせっせとはたらいてくれます。
たとえば、こちらは藤井さんの知人が試作したペダルサイクル式の人力発電機。日照時間が少ない梅雨どきも、1時間こげば60ワットの電力がつくれるので、「電気洗濯機が(ソーラー発電だけでは足りず)途中で止まる…」という心配が減ったそうです。しかもエクササイズ効果があるので、一石二鳥。

記者もこがせていただきました。「自分の足で電気をつくれる」「しかも、ちょっと痩せるかも」という思いで、電気どころか元気まで出そう。これ、購入したいです…。

shizen_12
――さて、そんな元気あふれる藤井さんの一日のスケジュールを伺ってみました。

朝は5時半に起き、読書を開始。気持ちよく目が覚めるので、7時に日がのぼるころには単行本を1冊読みきってしまうことも。

それからソーラーランタンやソーラーライトをベランダに出して充電し、炭バケツの上に、土鍋をのせてごはんを炊きます。

仕事はお昼から。使う道具は、足踏み式ミシンや炭アイロン。アイロンは、直流電気式のものがあれば便利…とは思うけれど、なければないで工夫。生乾きの布に「手アイロン」をかけると、いい感じでシワ取りができるので、しだいに「手アイロン」でもよい感じに仕上がる仕事を選ぶようになりました。

電動ミシンで大量に服を作る必要のある展示会などは、今の環境には合わないので、自然に糸つむぎや草木染めなどの仕事にシフト。生き方と仕事とが、調和されています。掃除はおもにほうきと雑巾で。「手回し洗濯機」も大活躍です。


shizen_13
暮らしぶりからやさしい作品が生まれる。こちらは近江麻の生地をすくも藍で染めた、藍染め
shizen_14
アンティークショップで飾りとして陳列されていた「炭アイロン」が活躍
shizen_15
暗い時刻は、IKEAで買ったソーラーライトが2台活躍(現在は廃番)
黒いパネル部分がバッテリーとして取り外し可。ともした灯りがこのパネルに当たると、
またその光がわずかながら充電されるというループ&ループな逸品
shizen_16
shizen_17

昭和50年代まで多くの家庭で使われていた足踏み式ミシン
shizen_18
深みのある音を鳴らす、手回し式の柱時計

――こちらは、「ノン電化式冷蔵庫」。素焼きの植木鉢と気化熱を利用します。

写真のように、茶色の大きな植木鉢の内側に、白いひと回り小さな植木鉢を入れ、その大・小のすき間に砂利をつめ、水で砂利を濡らします。(植木鉢の底にはテープを貼って穴をふさぐ)すると湿った砂利の気化熱によって、小さな鉢の中が冷えるそう。本当ですか…? 手を入れてみたら、確かにヒンヤリ。これは、アフリカなどの暮らしで実際に利用されている冷蔵方法なのだそうです。これも、日本のどのご家庭でも簡単に再現できそうですね。
shizen_19
生野菜やフルーツを入れれば、洒落たインテリアオブジェにも。

――こちらは、保温調理用の発砲スチロールボックス。一度加熱した生煮えの鍋を入れ、フタをして布で覆っておけば、保温が持続し、数時間後にはホカホカの仕上がり。電気やガス代の大きな節約になりそうですね。(鍋敷きを忘れると、発泡スチロールが溶けるほどの熱です!)

shizen_20
できるところから始めて見よう!簡単な節電ワザ

――その他にも、各家庭で簡単にできそうな藤井式・節電ワザの数々をご披露いただきました。

◆カーテンの着せ替え
「窓からの熱の出入りは大きいので、カーテンをクリップ式にして、取り変えるだけで、部屋の温度はかなり変わります。たとえば冬は、結露防止フィルムを吊り下げて「なんちゃって二重窓」にした上に、キルトのカーテンを。
夏は、麻の生地。下部を風が通るように切り込みを入れて。布を濡らしておくと、気化熱でとても涼しくなるんです」
shizen_21

◆扇風機術
「エアコン1台を扇風機に変えるだけで、かなりの節電。ソーラー発電にはじめて挑戦する人は、直流式の扇風機を使うことから始めてもいいでしょうね。朝までつけっぱなしでも、もちますよ。扇風機を倒して天井に向けて使うと空気が大きく対流するので、冬にもおすすめなんです」

◆果物マジック
みかんの皮を保存しておくと、シンクまわりのちょっとした油汚れを取るのに便利です。その隣は自家製梅干し。ねぎなど野菜の根を水挿ししておくと、可食部分がまた生えてきます。
shizen_22

◆手づくりコンポスト
野菜・果物の生ゴミは米ぬかと混ぜて、土嚢コンポストとして堆肥化させます。思ったほど悪臭もなく簡単ですよ。それを、ベランダ菜園につかいます。
shizen_23
shizen_24

――なるほど…。たくさんご紹介していただきましたが、電気をエコしてみたいという自然派ママさんやOLさんは、どの辺から入ったらいいでしょうか?

「ふだん使用されている電力を把握してから、ちょっとずつ節電の実験をされることをおすすめします。まずは照明の見直しが良いかもしれませんね。60ワットの照明×5か所使っていたのを、10ワットの電球×5か所にすると、電気代がまったく違うんですよ」

――昔は、ピカピカに明るい環境で作業しないと視力が低下する…と言われたものですが、現在では視力と明るさに、さしたる相関関係がないことがわかっています。「必要」なぶんだけで、いいのですね。記者もさっそくお洒落なソ-ラーランタン…などから入ってみたいです。

「そうですね。ストレスやハードルを感じたら続かないと思うので、心地よいこと、楽しいことが一番ですね。

自家発電についてもうちょっと知りたい…という方には、ソーラーパネルを組み立てるワークショップがおすすめです。グリーンタートルズ藤野電力PVネット(太陽光発電所ネットワーク)といった団体や企業が、そうしたワークショップをおこなっています。

私も、ちょっとしたソーラー発電セットを人にお貸ししています。1か月間、500円で太陽光パネル1枚(50ワット)とバッテリー(38アンペア)とインバータ(300ワット)のセットで、ささやかな自家発電を試していただく。ちょっとでも自分で電気をつくる感覚を、楽しんでいただきたいんです」

――それはいいですね。ソーラースチームなど、ベランダでの太陽光調理法も、さっそく試してみます(冒頭)。
「ママさん達に、ぜひ知っていただくといいのは“黒”の焦熱効果です。ソーラースチーマーなどの器具がなくても、ペットボトルや缶を黒く塗って、中に水を入れるだけで、晴天なら40度くらいにはなるでしょう。そうすると、ちょっとからだを拭いたり、温かいお湯を飲めますよね。アルミシートで覆うと、なお焦熱効果があるので、お米と水を入れておけば、季節と条件によっては炊けると思います。ラップでくるんだおにぎりにぐるっと海苔を巻いて、太陽の下に置いておくだけでも、熱を集めますよ。でも、知人がペットボトルに水を入れておいただけでも床が焦げたことがあったそうなので、日の当たり方にはじゅうぶん注意してくださいね」

shizen_26黒い缶にアルミシートで、“ホカ弁”ができる!?

――恐るべしソーラーパワー…なのですね。3・11の直後、被災したご高齢者などは、からだが冷え切ってしまい、「あたたかいものが食べたい…」と言いながら亡くなった方も多かったと聞きます。そういうとき、こうした工夫を知る方がいれば、痛手を減らすこともできるかもしれません。

今後、何が起こるかわからないこの時代、皆さんも、ぜひこの太陽エネルギーについて知っていただければ、こころ強いのではないかと思います。日本中のご家庭が、ほんのちょっと太陽エネルギーを利用したら、全体のエネルギーは、どうなるでしょうね。
藤井智佳子さん、どうもありがとうございました。

shizen_25取材者たちを和ませる、ベランダの亀さんにも…ありがとうございました。

藤井智佳子さんプロフィール
北海道生まれ、東京都国立市在住。織物・染色作家。
2011年の東日本大震災後の計画停電を経験したことから節電を始め、2012年9月から東京電力との契約を解除し、電気代ゼロ円の電力自給生活に移行する。以後、電力自給に関するお話し会やワークショップなどを開催し、TV、新聞など各種メディアで「ソーラー女子」として取り上げられる。
Twitter:https://twitter.com/girl_solar

株式会社スタジオポケット

代表取乱役・早川さや香と、お目付け役の青木ポンチを中心に活動する、「地球と社会のほころびを縫う」をコンセプトに発信する物書きユニット。編著作に『未来につなぐ わらごはん』(集英社)、『「勉強しろ」と言わない子育て』(講談社)、『震災から1年後の被災地レポート』(PHP)など。
http://ameblo.jp/studiopocket/
メールマガジン
おすすめのイベント情報やコラムのご紹介をメルマガでお届けします。「新着情報や人気コラムをまとめて知りたい」という方はぜひご登録ください!
最新の記事をチェック

関連記事